松浦園インタビュー

東京都三鷹市でシュタイナー幼児教育を実践する「なのはな園」。
在園児の親たちと共に進めた制作を通じて、ホームページの在り方について私たちも改めて考えることができました。
制作について、そしてこれからの運営などについて、主任教師である松浦 園(その)先生にお話を伺いました。(2010年8月)

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自分たちのアイデンティティって?

―― 「なのはな園」とはどういうところなんでしょうか。簡単にご説明ください。

松浦 なのはな園は、今年で開園15年になるシュタイナー幼稚園です。

シュタイナー教育の目的は、『自分で考え、自分で判断し、自分で行動できる、真の自由な人間を育てる』というものです。

シュタイナーの人間観では、人は7年ごとに成長の節目を迎えると考えています。そして成人になるまでには、それぞれに次のような課題があります。

簡単に申しますと、0歳から7歳になるまでの第一7年期の課題は「自分で行動する」ために、「健全な体と意志」を育てること。次の第二7年期では「自分で判断する」ために、「感じること、つまり感情」を。そして第三7年期では「自分で考える」ために、「思考」を育てます。

なのはな園で子供たちが過ごすのは、第一7年期の後半、3〜6歳です。この時期は、体の育ちとともに、初めて親から離れて集団生活を体験します。そうしたことを自然に取り込めるように、同じリズムで淡々と繰り返される園での生活と、「遊び」を通じて育つ、というふたつの大きな柱があります。

そしてもうひとつ大きな特徴は、親と教師による自主運営の園だということです。これは、私たち大人にとっても、大きな学びの場となっています。

―― 今年で開園15周年ということですが、これまでホームページがなかったことには何か理由があるのでしょうか?

松浦 なのはな園開園当初から2004年まで「東京シュタイナーシューレ(以下シューレ)」というシュタイナー学校が三鷹にありました。

シュタイナー学校に入学する前段階としてシュタイナー幼稚園に入園することは自然な流れですから、毎年一定の入園者があり、園児募集を告知する必要がなかったのです。

ところが2004年、シューレが相模原市に移転しました(編註;現・学校法人シュタイナー学園)。このことはなのはな園にとってもとても大きな出来事でした。

それまではシューレの前段階として安定した地位にあったのが、突然、自分たちのアイデンティティーを求められる状況になったのです。

同時に経営的にも園児募集の必要性を感じ始めました。

そのことが、ホームページ制作を本気で考えるきっかけでした。

本当に必要なのだろうか?

―― 企画の準備段階から関わらせていただきましたが、公開までとても長い時間がかかりましたね。

松浦 はい。

先ほども述べたように、この園は親たちの手によって運営されています。どんなことにも話し合いの場がもたれ、多数決で何かを決めることはありません。ですから、方向性を決定するだけでもとても時間がかかります。

―― とても驚いたのは、「そもそもこの園にホームページは必要なのか?」というところまで話を掘り下げていきますよね? 通常は、「どのようなページにするか」「何を掲載するか」といったことは深く考えますが、そこまでさかのぼって議論することは稀です。

松浦 そうですね(笑)

この園では「出会い」というものをとても大切にしています。ホームページなどで前もって情報を与えることで、そうした出会いの感動が薄れてしまうのではないか、という危惧がありました。

でも、はじめから一緒にじっくりと取り組んでいただいたおかげで、そうした微妙なバランスもうまく汲み取っていただけたと思います。

ああ、生きものなんだなあ

―― 実際に公開されていかがですか?

松浦 なのはな園らしいホームページができてとても喜んでいます。

話し合いを重ねて内容を煮詰めても、見た目のイメージが合っていないと伝わりづらいですよね。今回のデザインは、色々なバランスがうまい具合に響き合っていて素晴らしいと思います。

運営の面では、本当に「生きものなんだなあ」と実感しています。情報を更新すると即座に反応があります。また、地理的に遠く離れた人からのお問い合わせもあり、広報という点ではとても機能しています。どちらもこれまでは考えられなかったことです。

―― 今後ホームページで展開していきたいことなどはありますか?

松浦 とても良いものができたと思っていますが、情報を整理し切れていないところや、不足している部分もあり、内容的にはまだ改善の余地はたくさんあると思います。

今後も、なのはな園のホームページとして外部の人に誠実であるためにはどういうものが必要なのか、ということを中心に据えながら、園の中でのホームページの在り方をより良いものにしていきたいです。

■インタビュー:進藤一茂

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●インタビュー後記
「自分たちにホームページは本当に必要なのだろうか?」
これからホームページを作ろうと思っている人は、ぜひそういうことまで考えてみてください。それを通して、自分が本当に大切にしていることが見えてくると思います。
なのはな園ホームページの制作に関わらせてもらって得たものは、そういう「当たり前」をもう一度見直してみるという、とても大切なことでした。

なのはな園 ホームページ
http://nanohana-en.com

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