ホームページを利用しての商品販売やフラワースクールの生徒募集にも力を入れている、南青山のフラワーショップ、カントリーハーベスト。
全面リニューアルから数ヶ月経ってのホームページへの思いを、代表でありフラワーデザイナーの深野俊幸氏に伺いました。(2010年4月)
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―― 最初のホームページ立ち上げからおよそ6年が経ちました。
カントリーハーベストにとってのホームページの形というのは、これまでどのように変化してきましたか?
深野 立ち上げ当初は周りを見ても、私達くらいの規模の店でホームページを活用している人はそれほど多くはありませんでした。
当時はまだホームページを持っているということだけでも喜びでしたので、「自分のイメージを表現して伝えるためのもの」を作りたいという意識が強かったと思います。
その後2回のリニューアルを経る中で、外からの意見が聞こえてきたり、見え方を考えたりしながら、ホームページの「運営」ということについて考える機会が増えました。現在では、営業ツールとしての役割という意味も強くなっていると思います。
ただ、どんな時も一貫しているのは、「原点」を表す、ということですね。
―― 「原点」とはどういうことですか?
深野 創業のときに思い描いた、店のコンセプトです。
店名の「COUNTRY HARVEST = 田舎で収穫した花たち」にすべてが集約されていますが、花の世界で主役級のバラなどではなく、道ばたの小さな花や実のもの、もっと言えば雑草や枯れ枝といったものを楽しみたい、楽しんでもらいたいということです。
私達のような仕事は、お客さんの意向に沿った営業をしていくことも重要な側面です。しかしそのことばかりに気を取られると、自分が本当に大切にしたい部分が薄れていってしまうこともあります。私は、それらのバランスをいつも考えています。
ホームページの良いところは、個人の考えやイメージをストレートに反映できることだと思います。ですから、原点を確認するためのものとして、とても大切に思っています。
―― ではホームページ制作でもっとも気を付けたのは、その「原点」をいかに表現するか、という部分ですか?
深野 はい、その通りです。
カントリーハーベストはおかげさまで創業15年になりますが、その間にたくさんの店が衰退していく場面に遭遇しました。その多くは、商売になりそうだからと言って、最も大切な基本コンセプトを変えてしまったことによる失敗でした。
私は、長年の積み重ねや経年による味のようなものが好きなのです。とても素朴で、ある種泥臭いものですが、その過程で徐々に上がっていくクォリティは、少しのことでは揺るがない本質的なもののように思います。
それは、お店でも、土地でも、もちろんホームページでも同じことだと思います。
―― そういう感覚は、どこで得られたのでしょう?
深野 外国、特にヨーロッパの田舎の風景ですかね。
そういう土地には、ゆっくりと時間をかけて積み重ねられた景色があります。誰かが企画して短期間で作りまたすぐに作り替える、というサイクルとは無縁のものです。そこには「ごく当然のように」その景色があり、それにとても感動するのです。
もちろん、それを現在の東京にそっくりそのまま持ってくることは不可能です。しかし、そういう感覚を、小さな植物を通じて感じることはできます。私がやりたいことはそういうことなのです。
―― ところでホームページにはWEB SHOPのページがありますが、楽天などの販売サイトには興味はありませんか?
深野 実は、はじめのホームページ立ち上げよりも前に、その類のサイトで販売してみたことがあるのです。まだネットショップ黎明期で、ページの構成や機能などにも問題はあったと思いますが、それを差し引いても、あまりにも自分のイメージとかけ離れたものだったので、そういうところで販売しているということに対して自己嫌悪に陥りました。
そういう経緯があるので、自分のホームページは、アーティスティックに私のイメージを表現してくれる人にお願いしたいという思いがありました。
商売的には、おそらく楽天などで販売した方が売り上げは良いのでしょうが、そこは自分の「原点」に関わる部分で譲れないところです。
しかし今のカントリーハーベストのホームページの形でも、WEB SHOPからの注文はコンスタントにいただいていますし、3月に告知したフラワースクールの体験レッスンではおかげさまで全席満員のご予約をいただきました。大切にしたい部分を守りながら商売にもつながっているので、この形には満足しています。
―― 今後、ホームページで展開していきたいことはありますか?
深野 あまり難しいことは考えていませんが、もっともっとカントリーハーベストの世界に入り込んでもらえるようにしていきたいですね。
好きなことをしてそれに共感してもらえれば、これほど嬉しいことはありませんから、今後もお店同様、ゆっくりじっくりと育てていきたいと思っています。
■インタビュー:鈴木陽子
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●インタビュー後記
ホームページというもののあり方をとても本質的に捉えていらっしゃるという印象でした。お花屋さんとフラワースクールを経営され、雑誌やテレビ出演などでもご活躍の深野さん。そのいつも揺るぎない佇まいの、根っこの部分に触れられたような思いです。また折に触れてお話を伺っていけたらと思います。
カントリーハーベスト ホームページ
http://www.countryharvest.co.jp